ニック・ボックウィンクル死去

昨日の天龍の引退に続き、またも寂しいニュースが。
ニック・ボックウィンクル死去。

言わずと知れた名レスラー。日本のファンにとっては、ジャンボ鶴田との戦いが印象的だ。

子供の頃、外人レスラーというと、いわゆる「異形の人」。
サーベルを持ち暴れるシンやフォークで刺すブッチャー、チェーンを振り回すブロディ。狂気を体現する「ガイジン」に震えた子供時代。

しかし、それらのレスラーに対しては、恐れおののきながらも、常に「憧れ」があった。
私の子供の頃の夢は、プロレスの試合での花束嬢(もう死語である制度だ)となり、花束で「ガイジン」に襲われるこだった。

フリーアナウンサーとして初めて仕事をすることになった雇い主との面接では、
「趣味は?」とのありきたりな質問からプロレスの話となり、その方がブッチャーに刺された! という経験をうかがい「うらやましいです!」と面接を忘れ訴えた。なんのとりえもない私が仕事を頂けたのは、プロレスファン同士の連帯感だったに違いないと今も確信している。

話がそれたが、怖い「ガイジン」に対しては、恐れても大変な憧れがあった。恐れというより「畏れ」。

しかし...ニック・ボックウィンクル
子供時代、一番本当に大嫌いだった!

上記の「ガイジン」たちは、みるからに狂っている、まさに「異形の人」だったことに対して、ニックはといえば、体は立派ではあるけれど、特筆するほどのものでもなく、普通の、それも一見紳士っぽいオジサンなのだ。

その、なんだかスカしたおじさんが、上品っぽい外見ながらずるいことったら!
のらりくらりといつもベルトを守るのだ。
試合も、子供からするとつまらない! すました顔をしていつも勝つ! ずるい!
「ダーティチャンプ」は本当に憎たらしかった。


それでも、
好きの反対語は「嫌い」ではなく無関心とよく言われるように
激しく嫌いだった彼のことは、大人になってからあらためて思い返し感心することが多々あった。全く「無関心」ではあり得なかった。

狂ったような振る舞いではなく、派手なアピールをするでもなく...それで「ヒール」たりえた存在は凄い。


「相手がワルツを踊ればワルツを、ジルバを踊ればジルバを」
大嫌いだった彼のことばは
私の「理想の男性」のあり方だ。

今だって、大嫌いなレスラーだ。
でも、鬼籍に入られて
たまらなく寂しい。